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個人再生と清算価値保障について

個人再生と清算価値保障について

借金が多くなってしまい、どうしても返しきれないというとき、「個人再生」という手続きで借金を大幅に減らしてもらえる制度があります。これは裁判所に申し立てをして、一定の条件を満たせば、借金の一部だけを返すことで、残りの借金を免除してもらえる仕組みです。自己破産のようにすべての借金を帳消しにする方法もありますが、個人再生は「ある程度の返済をすること」を前提として、家や車などの財産を守りながら生活を立て直すことができます。

この個人再生の手続きの中でとても大切なルールが「清算価値保障」というものです。ちょっと聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは簡単に言えば「自己破産した場合に借金返済のために処分されるはずの財産分の金額は、個人再生でも最低限返さなければならない」という決まりのことです。

もう少しわかりやすく説明してみましょう。

たとえば、あなたが車や貯金、不動産など、ある程度の財産を持っていたとします。もし自己破産をすると、それらの財産は原則として売られて、そのお金が借金の返済に使われることになります。これが「清算」という考え方です。

でも、個人再生では、家や車を処分せずにそのまま持ち続けられる可能性があります。もし「財産も手元に残しながら、借金だけ大幅に減らす」ことができてしまうと、それは不公平だと考えられます。そこで「清算価値保障」というルールがあるのです。これは、「持っている財産を売ったら得られる金額分は、最低でも借金の返済にあてなければいけませんよ」というルールです。

具体的に見てみましょう。

たとえば、あなたの借金が1000万円あるとします。一方で、あなたが持っている財産の合計が800万円だったとしましょう。この財産には、現金や預金だけでなく、車や生命保険の解約返戻金、不動産、株、そして将来受け取る予定の退職金の一部なども含まれます。

個人再生では、借金をたとえば200万円まで減らしてもらえるケースもありますが、この場合、「清算価値保障」のルールによって、最低でも持っている財産の価値である800万円は返済しなければいけません。つまり、あなたの借金を1000万円から200万円に減らすことはできず、800万円までしか減額できないということになります。

このルールは、自己破産をした場合との「公平性」を保つために設けられています。自己破産すれば財産を失うのが基本ですが、個人再生では財産を残せるぶん、その分の金額はしっかり返す必要がある、という考え方です。

ここで、「財産とは何を指すのか?」ということが大切になってきます。財産には以下のようなものが含まれます。

現金や預貯金 
自動車やバイク 
土地や建物などの不動産 
保険の解約返戻金(途中で解約したときに戻ってくるお金) 
株式や投資信託などの金融商品 
退職金(勤務先によっては、将来の退職金の一部を評価して計算します)

これらの財産を「今、売ったらいくらになるのか?」という観点で価値を評価し、その合計が清算価値になります。そして、この清算価値が高くなるほど、個人再生で返済しなければならない最低金額も高くなります。

逆に、持っている財産が少なければ、返済額も少なくて済みます。たとえば、借金が1000万円あっても、持っている財産が30万円しかなければ、返済額はこの30万円を下回ることはできませんが、それだけ返済すれば、残りの970万円は免除される可能性がある、というわけです。

返済は原則として3年間、特別な事情がある場合は5年間で分割して行います。つまり、たとえば清算価値が800万円とされた場合、それを3年間で返すなら、1年あたり約266万円、1か月あたり約22万円を返していく必要があります。この返済が可能かどうかも、個人再生が認められるかどうかの判断材料になります。

ここまでの話をまとめると、「清算価値保障」とは、個人再生において「最低限これだけは返さないといけない」という基準を決める重要なルールです。この基準を下回る返済計画は、裁判所に認めてもらえません。持っている財産が多ければ、借金の減額幅も小さくなり、持っている財産が少なければ、大きく減額される可能性があるということです。

個人再生は、借金で苦しんでいる人にとって生活を立て直すための有力な手段のひとつです。しかし、「清算価値保障」のようなルールがあることで、制度が不公平にならず、きちんとしたバランスが保たれているのです。

なお、実際に自分の財産がいくらに評価されるのか、清算価値がいくらになるのかは、自分では判断しにくいこともあります。そのため、個人再生を考える場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することがとても大切です。彼らは、財産の評価や適切な返済計画の作成などをサポートしてくれます。

正しく制度を理解し、自分に合った方法を選ぶことが、借金問題を解決する第一歩となります。